【相続人が海外在住】【遺産分割協議】【特別受益】海外在住の相続人に対し、交渉の上、特別受益を考慮した代償金支払により遺産分割に合意し、不動産を相続した事例

1.相談者様の年代、性別、ご要望等

  • 40代
  • 女性
  • 自営業
  • 被相続人:相談者様の母
  • 相続人:海外に在住する相談者様の兄(長男)、相談者様(長女)
  • 遺言書なし
  • 遺言書を作成しないまま母が亡くなってしまった
  • 不動産を相続し、名義を自分にしたい

2.ご相談内容

相談者様は、相談者様のお母様とともに、父から継いだ自営業を行っていました。事務所はお母様が名義人となっていました。

従前、お母様には、今後も相談者様がこの場所で家業を行っていけるように、相談者様がその不動産を相続する旨の遺言書を書いてくださいと、お願いしていましたが、お母様は、持病もなく、「まだまだ元気だから」と書かずにいました。間もなく、お母様は、急病で亡くなってしまいました。

お母様にはほとんど預金がなく、相続財産は不動産だけでした。相談者様は、不動産を相続し、事業を継続していくために、所有名義を自分に変更したいと考えました。

東南アジアの国で現地の女性と再婚し、長期在住している兄に連絡しましたが、昔から不仲であった兄は、遺産分割協議に応じるどころか、「親の遺産目当てだろ」など、ここに書けないような罵詈雑言を並べ立てられ、すぐに連絡が取れなくなってしまいました。

ところで、兄は、お母様の生前、お母様に対して、事業を始めるにあたって開業資金をもらったり、マンションの購入費用を出してもらったりと、ことあるごとにお金をせびっていました。お母様に預金がほとんどなかったのもそのせいでした。総額としてはかなりの金額になる記憶です。

相談者様としては、このままでは、兄に遺産分割協議に応じさせることはできず、遺産分割協議が未了のままでは事業継続に不安があるし、ゆくゆくは子らにも迷惑をかけてしまうと思い、自分の代できちんと相続登記をして、自分の子らには、兄と関わりを持たずに済むようにしたいと考え、専門家への相談を希望されました。

そこで、インターネットで「遺産分割」「特別受益」「相続」などで検索したところ、三輪知雄法律事務所のホームページを見つけメールフォームより問い合わせをしたところ、担当弁護士より返信メールがあり、希望日時に相談予約が取れたことから初回相談にいらっしゃいました。

3.法律相談後の経過

(1)弁護士の受任

初回相談で経緯を詳しく伺い、三輪知雄法律事務所へ委任されたいとのことでしたので、費用や見通しをご説明のうえ、委任契約書及び委任状の取り交わしを行いました。

委任状を取り交わしたことで、相談者様の窓口となって対応することが可能となります。そこで、弁護士より、東南アジアの国に住む兄に対し、通知を送り、交渉を開始することとなりました。

(2)海外在住の相続人の特別受益

担当弁護士は、兄が、お母様から、開業資金をもらったり、マンションの購入費用等をもらったりしていたことは、「生前贈与」であり、「特別受益」にあたると考えました。

生前贈与とは

生前贈与とは、被相続人が死亡する前に、被相続人が、相続人等に自身の財産を渡すことです。

特別受益とは

特別受益とは、一部の相続人だけが、被相続人から生前贈与や遺贈・死因贈与で受け取った利益のことです。民法には、特別受益分を、相続財産に持ち戻して相続分を算定することで、共同相続人間の公平を図る規定があります。

(3)海外在住の相続人との遺産分割協議

担当弁護士は、相談者様が把握している話を整理し、遺産目録及び特別受益目録を作成したうえ、下記の内容を記載した通知書を作成しました。
相手方は国外(東南アジア)に住んでおり、当初は連絡が取れませんでしたが、国際郵便やメール等を使用し、交渉しました。

・相談者様が不動産を相続する
・兄が、被相続人(お母様)から受領した生前贈与特別受益の総額は、不動産の評価額を上回るため、本来であれば、相談者様は、不動産相続のため、支払うべき金額はない
・早期解決のため、当方の遺産分割案に応じるのであれば、解決金(代償金)として一定額を支払う

(4)遺産分割協議書の作成

担当弁護士による粘り強い交渉の結果、兄へ一定の代償金を支払うことで、当方の提示する遺産分割協議書に合意することとなりました。

兄は、担当弁護士の要請に応じ、来日し、弁護士作成の遺産分割協議書に署名することとなりました。

(5)海外在住の相続人との遺産分割協議書の取り交わし、登記手続

通常、不動産の名義移転(相続登記)をする場合、相続人の実印を押印した遺産分割協議書に、印鑑証明書を添付して、法務局にて手続を行います。

しかし、兄は海外居住者であり、日本に住民登録がなく、実印や印鑑証明書がありません

このような場合、どのようにして、相続登記に有効な遺産分割協議書を作成すれば良いのでしょうか。

担当弁護士にて、法務局や司法書士に相談し、必要な手続を調査いたしました。

そして、本件の場合は、以下の手続について、弁護士において調整・実施しました(※あくまで、本件における手続です。事案によって異なりますので、ご相談ください)。

・兄が来日する日の調整
 (弁護士がメールにて調整しました。調整から実際の面会まで、弁護士が行います。相談者様から連絡していただく必要も、手続に同行いただく必要もありません)

・兄を来日させ、弁護士が、遺産分割協議書に署名させる
 (実印がないため、兄は署名のみです。相談者様には、あらかじめ郵送で署名押印・印鑑証明書の添付をいただいております)

・弁護士が兄に同行し、公証役場に赴き、「認証手続」を行う(署名証明書の作成)
 (遺産分割協議書における兄の署名に対し、実印と同じ効力を持たせる手続をします。必要な本人確認書類等については、あらかじめ弁護士が、公証役場に確認し、持参するよう、兄へ連絡しました)

・代償金の支払い
 (遺産分割協議書の署名・認証手続き完了後、弁護士が、その場で、相談者様に代わり、兄に対し代償金を支払いました)

・名義移転の登記手続
 (弁護士が手配した司法書士が、法務局に赴き、名義移転の登記手続を行います)

そして、無事、被相続人から相談者へ、名義移転の登記手続が完了し、本件解決となりました。

相談者様には、随時状況をご説明・ご報告し、書類の作成などのご協力はいただきましたが、相手方(兄)とは一切顔を合わせることなく、手続は全て完了しました。

4.解決までに要した期間と三輪知雄法律事務所の弁護士費用

三輪知雄法律事務所が解決までに要した期間と弁護士費用は以下のとおりとなります。

解決までに要した期間と弁護士費用

○ご相談から解決までの期間
 ・約1年程度

○三輪知雄法律事務所の弁護士費用
 ・着手金:33万円
 ・報酬金:【経済的利益】(土地及び建物の価額-代償金)×6.6%

※消費税込の金額。実費等は別途。
※費用は、あくまで参考としてお示しするものであり、個別の案件やご相談内容によっても異なりますので、詳細は法律相談の際に担当弁護士までお問い合わせください。

5.三輪知雄法律事務所の担当弁護士からのコメント

三輪知雄法律事務所 
担当弁護士: 平松 達基

出身地:名古屋市。出身大学:名古屋大学法科大学院。主な取扱い分野は、遺産分割・遺留分請求など相続全般、離婚問題、企業法務、クレーム対応など。

相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)により、相続により(遺言による場合を含む。)不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととなります。

しかしながら、遺言書がなく、また、共同相続人が遺産分割協議に応じない場合、相続登記手続ができないなど、現実には、様々な問題が発生します。

また、本件のように、他の相続人が海外や遠方におり、連絡が取れないとか、被相続人から生前贈与を受けているにもかかわらず、多額の代償金を支払わなければ、遺産分割協議に応じないなど主張してくるケースもあります。

不動産相続に関するトラブルを避けるため、以下のような方法が考えられます。
 

遺言書の作成

遺留分侵害請求される分は、預金を残しておいてもらい、あらかじめ遺言書を作成しておくことが考えられます。
有効な遺言書の作成については、弁護士へご相談ください。

■解決事例

【遺言作成】【連れ子】【遺留分侵害額請求】被相続人の養子から過大な遺留分侵害額請求を受けたものの、弁護士依頼により適正金額で早期解決に至った事例

特別受益(生前贈与)の客観的証拠の収集

指摘する側が、特別受益(生前贈与)の証拠を提示する必要があります。購入に関する領収書や預金の取引履歴が証拠になりえます。
通帳などが手元になくても、被相続人の死亡後、預金の取引履歴等の財産調査を行うことができますので、まずは弁護士へご相談ください。

遺言書なしで亡くなってしまった場合は、どのような方法で遺産分割協議を行うべきか専門家である弁護士に依頼されることをお薦めいたします。

本件のように、海外や遠方に住んでいる相続人については、感情的なもつれや以前から関係が良くないなどの理由により、相談者様から連絡をして返答がないというケースはよくあります。

そのような場合でも、弁護士から通知書を送ったところ、当人同士で話をしなくてすむなら話し合いに応じようとか、これ以上、放っておくことは良くないと考えるなど、海外や遠方の相続人から反応があるという場合もあります。

また、相続人が海外在住の場合には、住民票や実印を所持していないため、不動産の名義移転を有効に実施するために注意しなければならないポイントがあります。三輪知雄法律事務所では、遠方や海外在住の相続人に対する遺産分割協議や、特別受益に関する交渉についても対応しておりますので、ぜひご相談ください。

6.海外在住や遠方の相続人との遺産分割協議、特別受益の交渉に強い三輪知雄法律事務所へのお問い合わせ

「海外在住や遠方の相続人との遺産分割協議、特別受益の交渉に強い弁護士」へのお問い合わせは、以下の「電話番号(受付時間・平日 9:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

※この記事は公開日時点の法令等をもとに作成しています。
※個人情報保護及び争点の理解等の観点から、結論に影響がない範囲で事案の一部を変更している場合があります。